アクセシブルな PDF フォームの作成

PDF フォームをアクセシブルにするには、タグ付きドキュメントとして作成します。すべてのフィールドをタグツリー内で論理的に配置し、ツールヒントやキャプションを使用する適切なテキスト記述子を設定します。

アクセシブルな PDF フォームのデザイン時の注意点

Acrobat および Adobe Reader 用のアクセシブルなフォームを作成するときの注意点は以下のとおりです。

  • PDF フォームでは、円、線および長方形オブジェクトにはタグは付きません。これらのオブジェクトは、視覚や身体に障害を持つユーザーにとって有用な情報ではありません。スクリーンリーダーはこれらのオブジェクトの情報を読み上げません。

  • フィールドオブジェクトの「スクリーンリーダーの優先順位」を「なし」に設定しないようにします。「なし」に設定すると、たとえ読み取り専用フィールドであっても、ユーザーが Tab キーでそのフィールドに移動したときに、スクリーンリーダーは正しく読み上げることができません。

  • サブフォームは、関連する複数のオブジェクトを整理したり、論理的なタブ構造を構築したりするために役立ちます。デフォルトのタブ順序は、左から右、上から下という配置順序になっています。例えば、2 つのサブフォームが並んでいて、各サブフォームにいくつかのフィールドオブジェクトが含まれている場合、タブシーケンスは最初のサブフォームのフィールドを順番に通り、次のサブフォームに移動します。

  • Tab キーでラジオボタンに移動したとき、スクリーンリーダーは、そのラジオボタンが属するグループオブジェクトのテキストをまず読み上げてから、ラジオボタンのオンの値を読み上げます。ラジオボタンの各排他グループにはカスタムのスクリーンリーダーテキストを設定し、またラジオボタンのオンの値が、キャプションと一致するか、または意味のある値を使用していることを確認してください。

  • 画像を使用すると、障害を持つユーザーによっては、フォームをより良く理解できるようになる場合があります。ただし、多くのスクリーンリーダーはグラフィックを読み取ることができないため、画像の使用により、視覚に障害のあるユーザーに対するフォームのアクセサビリティが低下する可能性もあります。画像を使用する場合は、フォーム上のオブジェクトとその目的を説明するテキストを指定してください。

  • ページおよびそのマスターページ上でのオブジェクトのタブ順序は、オブジェクトの垂直方法の位置関係によって決まります。フォームをテストし、スクリーンリーダーでのオブジェクトの読み上げ順序が意図するとおりであることを確認してください。

  • クライアントサイドのスクリプトは、スクリプトがクライアントのアプリケーションのフォーカスを変更した場合にスクリーンリーダーおよびキーボードの動作を阻害する可能性があります。例えば、change および mouseEnter イベントをコンボボックスやリストボックスで使用した場合、間違ったアクションを引き起こすことがあります。クライアントサイドのスクリプトを記述する際は、スクリーンリーダーおよびキーボードに問題を起こさないよう注意してください。同様に、ユーザーにとって読みにくくなる可能性があるので、テキストの明滅などのビジュアル効果を生むイベントスクリプトの記述は避けてください。

  • フォームに大量のオブジェクトが配置されている場合、Acrobat 6.0.2 では、Tab キーによる移動に時間がかかることがあります。Acrobat 6.0.2 と互換性のあるフォームを作成する場合には、フォームオブジェクトをいくつかのグループに分け、各グループを取りまとめるように名称未設定のサブフォームを配置すると、論理構造に中間のレベルが追加され、この問題を解決できます。

    フォーム作成者およびユーザーは、Acrobat とスクリーンリーダーに関する既知の問題を把握しておく必要があります。

  • ユーザーがフィールド(パスワードフィールドを含む)でキー入力を行うと、スクリーンリーダーが各キー操作を読み上げてしまいます。

  • 検証エラーの通知などでメッセージボックスが開くたびに、フォームがフォーカスを失ってしまいます。Tab キーを再度押すと、フォーカスはタブ順序の先頭のフィールドに戻ります。

  • スクリーンリーダーは、すべてのテキストがフォームのデフォルトロケール設定の言語で記述されているものとして読み上げます。

  • 編集可能なレイアウトが含まれるフォームのアクセシビリティタグを Acrobat で表示するには、Acrobat でフォームを開く前にスクリーンリーダーを実行する必要があります。

フォームのアクセシビリティ機能をテストするテクニック

作成したフォームのアクセシビリティ機能を確認するには、様々な支援テクノロジーを使用してフォームをテストします。フォームは、ここで説明するテクニックで簡単にテストできます。

フォームは必ずキーボードのみで入力できるようにします。フォーム全体の入力を確実に行い、すべてのフィールドとボタンをテストします。フォームの入力を進めながら、以下の項目に基づいて改良の必要があるかどうかを検討します。

  • 実行できない操作はないか。

  • スムーズに実行できない、または実行が難しい操作はないか。

  • キーボードの操作手順は明文化されているか。

  • ボタンなどのコントロールや、メニュー項目にはすべて、下線付きのアクセスキーが付いているか。

  • スクリーンリーダーソフトウェアの評価版はインターネットから無料でダウンロードできます。スクリーンリーダー実行の結果をテストするため、モニターの電源を切り、スクリーンリーダーだけでフォーム内を移動し、入力を行ってください。フォームの作成者はそのフォームに慣れ過ぎていて、スクリーンリーダーが読み上げる情報が十分で、意味が正しいかどうかを正当に判断できない傾向にあります。モニターの電源を落としたテストは、可能であれば第三者に依頼するのが望ましいでしょう。

  • 表示拡大ソフトウェアの評価版もインターネットを通じて無料で入手できます。

  • 音声入力ソフトウェアはコンピューターショップなどで安価で販売されています。音声入力だけを使用してフォームをテストしてください。

    視覚障害を持つユーザーの多くは、フォームを読むためにテキストと背景のコントラストを大きくします。Microsoft Windows は、コントラストの大きなカラースキームを備えています。これにより、視覚障害を持つ多くのユーザーがフォームへの入力で使用すると考えられるカラースキーム設定に近い設定で画面を表示できます。画面をコントラストの大きなモードに設定するには、Windows のコントロールパネルにある「ユーザー補助のオプション」で目的の機能を有効にします。コントラストの大きなモードを有効にすると、オブジェクトパレットに大きいアイコンが表示されます。また、カンバスにオブジェクトをドラッグすると、フィールドのラベルおよび値がコントラストの大きなモードに表示されます。コントラストの大きなモードでは、Ctrl + および Ctrl - のショートカットキーをページ編集の調整およびサブタイプ間の切り替えに使用できます。

    このモードでフォームの入力を進めながら、以下の項目に基づいて改良の必要があるかどうかを検討します。

  • フォームの中に、表示されない、見にくい、または使用が難しい部分はないか。

  • 背景が白い箇所で、黒く表示され続ける領域はないか。

  • 適切なサイズでなくなったり、途切れて表示されている要素はないか。