インスタンスプロパティは、
function
、
var
、または
const
キーワードのいずれで定義されているかにかかわらず、プロパティが基本クラスの
private
属性で宣言されていない限り、すべてのサブクラスに継承されます。例えば、ActionScript 3.0 の Event クラスには、すべてのイベントオブジェクトに共通するプロパティを継承する多数のサブクラスがあります。
一部の型のイベントでは、Event クラスにイベントを定義するために必要なすべてのプロパティが含まれます。 これらの型のイベントでは、Event クラスで定義されたもの以外のインスタンスプロパティは必要ありません。 このようなイベントの例として、データが正常にロードされたときに発生する
complete
イベント、ネットワーク接続が確立されたときに発生する
connect
イベントなどがあります。
次の例は、サブクラスに継承されるプロパティおよびメソッドの一部を示す Event クラスからの抜粋です。 プロパティが継承されるので、あらゆるサブクラスのインスタンスは、これらのプロパティにアクセスできます。
public class Event
{
public function get type():String;
public function get bubbles():Boolean;
...
public function stopPropagation():void {}
public function stopImmediatePropagation():void {}
public function preventDefault():void {}
public function isDefaultPrevented():Boolean {}
...
}
その他の型のイベントは、Event クラスで使用できない固有のプロパティを必要とします。 これらのイベントは、Event クラスで定義されたプロパティに新しいプロパティを追加できるように、Event クラスのサブクラスを使用して定義されます。 このようなサブクラスには、
mouseMove
イベント、
click
イベントなど、マウス操作またはマウスクリックに関連付けられているイベントに固有のプロパティを追加する MouseEvent クラスなどがあります。次の例は、MouseEvent クラスからの抜粋であり、サブクラスには存在するが基本クラスには存在しないプロパティの定義を示しています。
public class MouseEvent extends Event
{
public static const CLICK:String= "click";
public static const MOUSE_MOVE:String = "mouseMove";
...
public function get stageX():Number {}
public function get stageY():Number {}
...
}
アクセス制御指定子と継承
プロパティが
public
キーワードで宣言された場合、このプロパティは任意の場所のコードから参照できます。つまり、
public
キーワードは、
private
、
protected
、および
internal
キーワードとは異なり、プロパティの継承に制限を加えません。
プロパティが
private
キーワードで宣言された場合、このプロパティは定義されたクラス内でのみ参照でき、サブクラスに継承されません。この動作は、旧バージョンの ActionScript とは異なります。旧バージョンでは、
private
キーワードは ActionScript 3.0 の
protected
キーワードと同じように動作しました。
protected
キーワードは、定義されたクラス内だけでなく、すべてのサブクラスからもプロパティを参照できることを示します。Java の
protected
キーワードとは異なり、ActionScript 3.0 の
protected
キーワードでは、同じパッケージ内の他のすべてのクラスからプロパティを参照できるわけではありません。ActionScript 3.0 では、サブクラスのみが
protected
キーワードで宣言されたプロパティにアクセスできます。また、protected 指定されたプロパティは、サブクラスが基本クラスと同じパッケージ内にあるか、または異なるパッケージ内にあるかにかかわらず、サブクラスから参照できます。
プロパティが定義されているパッケージからのプロパティへの参照を制限するには、
internal
キーワードを使用するか、またはアクセス制御指定子を一切使用しないようにします。
internal
アクセス制御指定子は、アクセス制御指定子が指定されていないときに適用されるデフォルトのアクセス制御指定子です。
internal
とマークされたプロパティは、同じパッケージ内に存在するサブクラスによってのみ継承されます。
次の例を使用して、各アクセス制御指定子がパッケージ境界を越えてどのように継承に影響するかを確認できます。 次のコードは、AccessControl というメインアプリケーションクラスと Base および Extender というその他のクラス 2 つを定義します。 Base クラスは foo パッケージ内にあり、Base クラスのサブクラスである Extender クラスは bar パッケージ内にあります。 AccessControl クラスは Extender クラスのみを読み込み、Base クラスで定義されている
str
という変数にアクセスしようとする Extender のインスタンスを作成します。
str
変数は
public
として宣言され、この結果、次の抜粋に示すようにコードがコンパイルされて実行されます。
// Base.as in a folder named foo
package foo
{
public class Base
{
public var str:String = "hello"; // change public on this line
}
}
// Extender.as in a folder named bar
package bar
{
import foo.Base;
public class Extender extends Base
{
public function getString():String {
return str;
}
}
}
// main application class in file named AccessControl.as
package
{
import flash.display.MovieClip;
import bar.Extender;
public class AccessControl extends MovieClip
{
public function AccessControl()
{
var myExt:Extender = new Extender();
trace(myExt.str);// error if str is not public
trace(myExt.getString()); // error if str is private or internal
}
}
}
その他のアクセス制御指定子が前の例のコンパイルおよび実行に与える影響を確認するには、
AccessControl
クラスから次の行を削除またはコメントアウトした後、
str
変数のアクセス制御指定子を
private
、
protected
、または
internal
に変更します。
trace(myExt.str);// error if str is not public
変数のオーバーライド禁止
var
または
const
キーワードで宣言されたプロパティは継承されますが、オーバーライドすることはできません。プロパティをオーバーライドすると、サブクラスでプロパティが再定義されます。 オーバーライドできるプロパティの型は、get アクセサーと set アクセサー(
function
キーワードで宣言されるプロパティ)のみです。インスタンス変数をオーバーライドすることはできませんが、インスタンス変数の getter および setter メソッドを作成し、これらのメソッドをオーバーライドすることで、同じ機能を実現できます。